「副社長」と勘違いされるVice President
Cimplex Marketing Group Inc.はロサンゼルスに拠点を置き、グローバル事業を展開する日本企業を市場調査とマーケティングの分野で支援する日系の会社です。
アメリカ人と名刺交換すると “vice president” の肩書を持つ人が本当に多いことに気づきます。「副、代理」の意味を持つviceですから「副社長」と訳すことができますが、副社長ってそんなにたくさん必要なんでしょうか?
目次
Vice Presidentは部署のトップ
よく名刺を見てみると、vice presidentの後ろにsalesやmarketingといった部署名が書かれていることに気づきます。アメリカの多くの企業において、vice presidentは部署のトップに立つ役職を指すのです。つまり、日本の組織の「部長」にあたり、Vice President of Salesなら「営業部長」となります。以下のような例があります。
1) Vice President of Sales
(営業部長)
2) Vice President of Overseas Business
(海外事業部長)
3) のように、vice presidentの上にseniorとつく人もいます。Seniorは「上席」と訳され、たくさんいるvice presidentの中で格付が上ということになります。日本の組織の「本部長」くらいの役職と捉えて良いと思います。また、vice presidentはよくVP(ヴィーピー)と省略され、会話では “senior VP” のように言います。
Senior Vice President of Business Development
(事業開発本部長)
アメリカ型企業統治のトップはOfficer
部長クラスがvice presidentとなっているのは、アメリカ型の企業統治と大きく関係しています。会社の経営を担うのはpresident(社長)ではなくofficer(執行役)であり、トップに立つのがchief executive officer(最高経営責任者)になります。俗にいうCEOですね(参考記事:Officer(執行役)という肩書き、役割)。その下にchief operating officer(最高執行責任者)やchief financial officer(最高財務責任者)などがいて、その下に各部を率いるvice presidentが何人もいるという構成です。
このvice presidentに関する勘違いは、あらゆるところで目にするので注意してください。Vice presidentという何だか偉そうな肩書に惑わされてしまいますが、彼らのほとんどは経営陣ではありません。むしろ、chiefやofficerとつく人のほうが偉いのが通常です。
最近は各国でこういったofficerの役職を経営陣に与える企業が増えています。日本でもCEOを名乗る人がいますね。ですが日本の会社法にofficerの制度はなく、最高経営責任者という役職もないということで、特に海外に対して地位をに分かりやすくするために用意したエキストラな肩書と言えます。
トップがPresidentの企業の場合
アメリカにもpresident(社長)を組織のトップとする企業があり、それに次いでvice president(副社長)という役職を置いていることもあります。ですから、日本の企業の副社長さんが英語版の名刺を作るときは、vice presidentで問題ないでしょう。「経営権のある」という意味でexecutive vice presidentやmanaging vice presidentという言い方もできます。
企業以外でのVice President
企業以外で使うvice presidentとして、アメリカで最も一般的なのは「副大統領」です。
4) Vice President of the United States
(アメリカ合衆国副大統領)
アメリカの人気ドラマに “Veep” という作品があります。架空の副大統領が主役のコメディで、Veepというのは先述したVPの俗語なのです。アメリカ人はVice President、VP、さらにVeepと聞くと、まず副大統領を思い浮かべるのが普通です。
最近は団体や機関などでもトップの役職をpresidentとするところが増えています。そういった組織の2番手はvice presidentであり、日本では「副会長」「副所長」「副委員長」などにあたる役職となります。