アメリカのマーケティングの特徴 (3) 法人向け商品もオンラインマーケティング

アメリカのオンラインマーケティング

Cimplex Marketing Group Inc.はロサンゼルスに拠点を置き、グローバル事業を展開する日本企業を市場調査とマーケティングの分野で支援する日系の会社です。 

この投稿は「アメリカのマーケティングの特徴」シリーズの第3回です。
(1)ブランディングへのこだわり
(2)答えは部長でも社長でもなく市場に聞く
(3)法人向け商品もオンラインマーケティング

アメリカのマーケティングの特徴、3つ目はオンラインマーケティングの先進です。EコマースやSNSの浸透によって、オンラインマーケティングはいまやどの国でも当たり前ですが、アメリカでは、消費者向けに留まらず法人向けの商品やサービス(便宜的に「B2B商品」と総称)の売り込みにおいても、オンラインを徹底的に活用しています。 

B2B商品は、どうやって売り込むのが一般的だと考えますか?展示会に出展する、DMやカタログを送る、コールドコールをかける、経済紙や業界誌に広告を載せる、などが伝統的な手法と言えます。その後、見込み顧客にアプローチしますが、営業部が主導を持ち、担当者が訪問して商品の特徴や導入のメリットなどを説明する、といったシナリオが考えられます。オンラインマーケティングの発達は、そういったセールスパイプラインを根本から見直し、営業とマーケティングを連動、融合させるものとなっています。 

オンラインで商材を探す人は7割以上

アメリカで商材探し
図1 アメリカのB2Bマーケティングに関するデータ
出典:BLUE CORONA 2019

国土の広いアメリカでは、見込み顧客に片っ端から連絡して「足で稼く」という営業スタイルはもとから無理でした。営業訪問するにしても、担当者が資料を持ってすっ飛んで行ける範囲は限られており、距離を克服して営業できる方法を常に模索、開発してきました。一例として、商品カタログの定期郵送があります。それがデジタルに移行し、全米、さらには世界各地に売込先を持つ企業にとって、オンラインツールは活用しない理由がないほど、価値の高いものとなったのです。 

売る側がオンラインでの情報発信に力を入れるようになり、B2B商品もあらゆる情報がインターネット上で見つかるようになりました。結果、米国の企業担当者の71%は商材を探す時に最初に検索エンジンを使うというデータが出ています(図1参照)。「商材」には、自社で導入するものだけでなく、卸売や小売が販売する目的で探す商品も含まれています。逆に考えると、メーカーや開発者にとっては、オンラインに情報がないことで市場の7割を取り損ねてしまう可能性が発生します。 

またB2Bバイヤーの62%が、デジタルコンテンツだけで購入を決定できるというデータもあります(図1参照)。これは会社サイトにある商品ページだけを見て購入する、ということではありません。各企業は詳細資料、FAQ、取扱説明書、価格表、見積り、動画、サンプル請求、無料サービス、チャットなどを用意し、簡単にアクセスできるようにしています。バイヤーが決定に至るまでに必要なあらゆる情報やサポートを想定し、オンラインで提供するのです。もちろんこの合間に、営業職が個別にフォローする体制の企業もありますが、買う側が主体的に情報収集して、購入決定できる仕組みをつくり上げている企業が多いのです。 

B2Bコマースの台頭 

アメリカのB2Bコマースの売り上げ
表1: アメリカのB2Bコマース売上 
B2B Ecommerce Sales in the United States by StatistaをもとにCimplex Marketing Groupが作成
アメリカの商材購入方法、オンライン、オフライン
表2: 商品タイプ別の商材購入方法
産業機械のような設備投資関連はオンライン購入には向かないが、産業用品の69%、梱包・発送用品の42%がオンラインで購入されている
Capturing the Offline Impact of Online Marketing in B2B by Boston Consulting Group (2019)​ をもとにCimplex Marketing Groupが作成

もう1つ特徴的なのが、B2Bコマースの発達です。これは企業がオンラインで商品を購入することで、グラフにあるようにアメリカでは売上が1兆ドルという規模に達しています(表1参照)。この成長は卸売業(問屋、ディストリビューター)がEコマース形式による受注を拡大したことが寄与しています。以前は、営業職が担当法人の注文を受けたり、販売部にあてに電話、ファクス、メールなどでオーダーが入るのが一般的でしたが、それをオンラインで注文する体制に切り替えたのです。 

つまりオンラインマーケティングによってつかんだ顧客が、最終的にオンラインで注文、売上が上がるようなストリームラインを構築することになります。もちろんオンライン注文に適さないB2B商品は多数ありますし、誰もが卸売業と取引できるわけではないのでB2Cと同じようにはいきません(表2参照)。ですがオンラインで売れるものはどんどん売っていこうとする動きは年々顕著になっています。B2Bだからオンライン販売にふさわしくない、という固定観念はもう過去のものです。 

一例として、レストランへの食材卸売があります。アメリカで一般的な食材を仕入れようとすると、US FoodsやSyscoといった業務用食品ディストリビューターと取引することになります。これらの企業はオンラインによる注文に一本化しており、レストランはインターネットを使わなければ食材を仕入れることすらできません。日本では今でも問屋による「御用聞き」があるようですが、国土の広いアメリカでそれをやっていては、もはや利益を出すことができないのです。 

コロナ禍で進化するオンライン戦略 

バーチャル展示会
自社サイトの中にバーチャル展示ブースを導入したPatlite社。24/7の常設展示が売り
Credit: Patlite (U.S.A.) Corporation

こういった変化により、B2B商品のオンラインマーケティングも日々進化しています。受注を目的としたウェブサイトを構築し、オンライン広告、SNS、コンテンツ、Eブラストなど、あらゆるツールを使ったリードジェネレーションを展開する企業が増えています。2020年からのパンデミックによってその動きはますます加速し、最近は展示会に出展できない穴埋めとして、自社サイトの中にバーチャル展示ブースを作ったり、AR/VRの技術を使ったデモを行ったりと、各社さまざまな手法を積極的に取り入れています。 


シリーズ「アメリカのマーケティングの特徴 」
(1) ブランディングへのこだわり 
( 2 ) 答えは部長でも社長でもなく市場に聞く 
(3) 法人向け商品もオンラインマーケティング

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Miyuki Sato

ロサンゼルスに拠点を置くマーケティング会社、Cimplex Marketing Groupの代表、専門は市場調査。在米20年以上、英語学習の本を4冊出版している。当ブログではビジネス英語に関する記事を多数投稿。