アメリカのマーケティングの特徴 (1) ブランディングへのこだわり
Cimplex Marketing Group Inc.はロサンゼルスに拠点を置き、グローバル事業を展開する日本企業を市場調査とマーケティングの分野で支援する日系の会社です。
この投稿は「アメリカのマーケティングの特徴」シリーズの第1回です。
(1)ブランディングへのこだわり
(2)答えは部長でも社長でもなく市場に聞く
(3)法人向け商品もオンラインマーケティング
ある日本企業の米国現地法人から以前、CM制作の問い合わせを受けました。担当者はアメリカに赴任して数ヵ月という人で、マーケティング活動について悩んでいました。やり取りの中で、印象に残った担当者のコメントがありました。
「日本と違って、アメリカでは芸能人でCMが作れないから難しい」
日米の大きな違いが、まさにこの発言に集約されていると思います。著名人を起用した宣伝広告をマーケティングの中心に位置づける日本の企業は多く、バブル経済以降はその依頼先をハリウッドの大物セレブにまで拡大しました。さらに漫画やアニメのキャラクターも引っ張りだこで、「コラボ」という名のもとに世界でも類を見ないキャラクターマーケティングを展開しています。
アメリカのマーケティングは、基本的にその真逆と言えます。会社の規模が大きくなればなるほど、セレブを起用することに慎重になります。もちろん、ファッションやコスメブランドの広告塔を女優が務めたり、スポーツブランドが契約するアスリートに出演してもらう、といった例外はありますが、日常で目にするマスマーケティングの9割以上は、著名人とはまったく関係ない演出です。
目次
ブランディングへのこだわり
アメリカの企業はなぜ著名人を起用しないのか?その背景には、文化、芸能界の構造、消費者メンタリティなど、日米の様々な違いをあげることができます。ですが最も大きいのは「ブランディングへのこだわり」と言えます。
アメリカの企業はブランディングに本当に力を入れていて、ロゴ、コーポレートカラー、自社メディア、スローガン、メッセージなど、細部にわたって緻密に計算したブランディングを展開しています。そして著名人も、出演する作品、パブリシティ、発信する情報(ソーシャルメディアなど)を通じて一個人としてのブランドを確立しています。
つまり企業もセレブもキャラも、それぞれが独立したブランドであり、「著名人の起用」=「他人のブランドを借りる」ことであって、それは自社で積み上げたブランドの認知度や信頼性とは違う、という考え方を持っています。下手するとその人のイメージが会社のブランドを上書きしてしまう可能性があるので、企業は安易に著名人を起用しないのです。著名人にとっても、特定の企業のイメージがついてしまうと、自分のブランドを左右するリスクがあります。
真のクリエイティビティが問われる
「著名人だのみ」というやり方が存在しない中で、効果の高いマーケティングを展開するには、大いなる切磋琢磨と創造性が必要です。アメリカのマーケティングが常に新しいものを生み出すのは、この部分の鍛え方がそもそも違うからです。異なる人種、文化、嗜好、価値観の人たちがぶつかり合いながら、真に訴求できるものをつくり上げていくことが、アメリカ式マーケティングのダイナミズムと言えます。
日本にいても、米国企業がグローバル向けに制作したCMを目にすることがあるはずです。そこに見える創造性や演出は、ブランディングへの洞察を深め、改めて考える良い機会になると思います。
シリーズ「アメリカのマーケティングの特徴 」
(1) ブランディングへのこだわり
(2) 答えは部長でも社長でもなく市場に聞く
(3) 法人向け商品もオンラインマーケティング