Cimplex Marketing Group Inc.はロサンゼルスに拠点を置き、グローバル事業を展開する日本企業を市場調査とマーケティングの分野で支援する日系の会社です。
アメリカの企業は、社長(president)がトップに立つ構造と、最高経営責任者(chief executive officer)がトップに立つ構造に大きくわけることができます。後者はofficer(執行役)が経営を担う、いわゆる「アメリカ型企業統治」に基づいたものです。このofficerという役職を少し掘り下げたいと思います。
トップはPresidentではなくOfficer
アメリカ型企業統治の大きな建前は、株主(shareholder)がまず取締役(director)を選出します。取締役で構成する取締役会(board of directors)は株主の代表として会社経営のための執行役(officer)を任命します。取締役会の長はchairmanと呼ばれます。小さな企業では株主、取締役、執行役の兼務がよくありますが、企業の規模が大きくなるほど取締役と執行役は別の人達で構成される傾向があります。
執行役は、chief executive officer(最高経営責任者、CEO)を筆頭に、chief operating officer(最高執行責任者、COO)、chief financial officer(最高財務責任者、CFO)などで構成されます。日本の企業にあてはめると、CEOが社長、COOが営業本部長、CFOが財務本部長といったところです。最近はchief technology officer(最高技術責任者、CTO)、chief marketing officer(最高マーケティング責任者)といった役職も一般的になっています。
企業の規模や規定によって違いはありますが、執行役というのは「実行部隊」という捉え方ができます。投資して資産を増やしたい株主、その株主の意向を受けた取締役が任命するのが執行役で、日々の業務を遂行する役割を果たします。
アメリカでよくC-levelという用語を目にします。これはchiefとつく執行役の総称で、「会社の経営陣」であることを示しています。Chiefには「最高位の」という意味があり、トップに立つ人に対して使われます。アメリカでCommander In Chiefは軍隊の最高司令官のことで、大統領がこれを務めます。Editor In Chiefは編集長です。
同じ名称でも企業統治によって違う肩書
上記のような企業統治が主流のアメリカですが、president(社長)がトップに立つ企業も今でもあります。その場合、presidentの下にvice president(副社長)のような幹部がいることもあります。とても紛らわしいのですが、officerがトップに立つ企業でvice presidentは「部長職」にあたり、たいてい経営権はありません(参考記事:「副社長」と勘違いされるVice President)。混乱を避けるために副社長をexecutive vice presidentやmanaging vice presidentとして「経営権がある」という意味を持たせる企業も見られます。
執行役(officer)というポジションは、国内規定でdirector(取締役)が経営権を持つ日本の企業には存在しません。しかし最近はCEOやCOOを名乗る人が日本にも増えていますよね(ライブドアの頃からでしょうか?)。これは国外向けに用意したエキストラの役職と言えます。会社案内をよく見てみると「代表取締役社長兼CEO」となっていたりします。社長よりCEOのほうが響きがいいからと後者を自称する人もいるかもしれません。