Cimplex Marketing Group Inc.はロサンゼルスに拠点を置き、グローバル事業を展開する日本企業を市場調査とマーケティングの分野で支援する日系の会社です。
当社へのお問い合わせで圧倒的に多いのは、市場調査(マーケティングリサーチ)に関する内容です。アメリカでアンケートやインタビューをやりたいけれど、どれくらいの費用が必要なのか見当がつかない、という企業が多いようです。そういった疑問にお答えする調査費用の情報をここで共有いたします。
アメリカの市場調査は高い?安い?
日本と比較して高いか安いかと聞かれた時、アメリカの費用は概ね「高め」とお答えしています。その理由は以下の通りです。
- アメリカでは市場調査を科学的なアプローチで行うため、調査に関わる人の専門スキルが高く、そのためサービス費が高めになる傾向が強い
- アメリカの企業は市場調査を非常に重視し、大きな予算をつけるため、業界全体がその基準に慣れてしまっている
- アンケートやインタビューの参加者選びが日本よりも煩雑 - 人種、言語、所得など属性の多様性が大きいため、条件が必然的に細かくなる
- 謝礼額が日本よりも高め - 低く設定すると「その額でもいい」と思う人しかリクルートできず、良い参加者が集まらないことが多い(安かろう悪かろう)
- 円安や全般的な物価の違いから高く感じられる
タイプ別費用の目安
次に調査のタイプ別に費用の目安を見ていきます。
一次調査(プライマリーリサーチ)
対象から直接情報を入手する調査手法です。消費者調査においては、アンケートやインタビューが一般的です。ほかにも調査員が特定の場所に出向いて観察するオブザベーションなどがあります。
1)定量調査
より多くの定数を集めて統計を取る調査で、回答者が自分で書き込むアンケートが一般的です。今はほとんどのアンケートがオンラインになり、全米規模の実施も以前よりずっと安くできるようになりました。
オンラインアンケートの費用項目:
- 調査設計
- 設問作成とフォーム設置
- 参加者のリクルーティングと実査
- データ取得と集計
- 分析、報告、提案
- 参加者への謝礼(抽選でギフトカードなどを進呈)
- 謝礼の発送
- プロジェクト管理
各項目は案件によって大きな差が出ますが、上記すべてを含めた案件で平均すると単価25~70ドルが相場です。つまり有効回答数200のアンケートを実施するには、5000~1万4000ドルが目安となります。最近は減ってきましたが、電話や郵便による定量調査もあります。これらは単価が上がります。
参考ページ:定量調査のケーススタディ
2)定性調査
数よりも質を重視した調査で、個別またはグループでのインタビューによって深く掘り下げた意見を聞き出します。統計を取ることより個々の嗜好や意見を分析します。インタビュー会場に来てもらうので、地域ごとの実施が基本ですが、最近はオンラインでのインタビューも普及しています。インタビュールーム+視聴ルームといった調査施設が、そっくりそのままウェブ上で実現できるようになりました。
インタビューの費用項目:
- 調査設計
- ディスカッションガイド作成
- 参加者のリクルーティング
- モデレーション(司会進行)
- 施設利用と関連サービス(録画、アウトプットなど)
- 参加者への謝礼
- 分析、報告、提案
- プロジェクト管理
各項目は案件によって大きな差が出ますが、上記すべてを含めたグループインタビュー案件で平均すると単価1000~1200ドルが相場です。つまり参加者20人のグループインタビューを実施するには、2万~2万4000ドルが目安となります。個別インタビューは通常グループよりも単価が上がります。
参考ページ:定量調査のケーススタディ
二次調査(セカンダリーリサーチ)
すでに公開されている統計や情報をもとに調査を行います。特定の市場や業界の全体像を知るために実施するのが一般的です。二次調査の費用は、情報入手の難易度、調査ボリューム、参考文献の金額などに大きく左右されます。また業界調査では専門家に話を聞くのも一般的で、一次調査との混合になるケースも少なくありません。
簡単に費用の目安が出しにくい分野ですが、二次情報のみの業界調査は報告書1ページにつき200~400ドルが相場です。つまり30ページ分の情報を得るには6000~1万2000ドルが目安となります。
専門家へのインタビューが入ると単価は上がります。専門家に支払うのは、インタビューへの謝礼ではなく、専門知識の提供に対するコンサルティング費となります。謝礼よりも高い金額が設定されます。
参考ページ:業界・市場調査のケーススタディ
賢く調査を行うために
できるだけ費用を抑えて有益な調査を行いたいと考えるのは、どの企業にも共通する希望だと思います。調査会社を探すにあたって、以下のような項目をチェックすると良いでしょう。
- その調査会社は実査可能か? ― 大きな調査会社は営業力を生かして案件を取ってきますが、案件を管理するだけで業務のほとんどは外注というケースも珍しくありません。そうすると必然的に費用は上がります
- その調査会社の得意分野か? ― 調査会社にも得意・不得意があります。リサーチする内容がその会社の得意分野か判断することが重要です。特に日本の文化や特定ニーズに関連するもの(食、コンテンツ、インバウンド、ニッチ市場など)は、それらを理解してくれる会社でないと調査が難航します
- 消費者データベースを持っているか? - 調査会社が消費者データベースを持っていると、アンケートやインタビューなどのリクルーティング費用を抑えることが可能です
- モデレーションは誰がやるか? - インタビューのモデレーション(司会進行)の相場はかなり高いです。モデレーターによって得意とする分野も異なり、車や医療では専門のモデレーターが存在します。御社の代理としてインタビューできる人かどうか判断することが重要です(アメリカでは、エンドクライアントによるモデレーターの審査も一般的です)
- 報告、分析、提案の言語 - 英語で行った調査を日本語で報告できる調査会社なら、翻訳の費用を抑えることにつながります
*当社のリサーチサービスについては、こちらのページをご覧下さい。