日本語にぴったり当てはまらない単語は多いですが、contextもその1つだと思います。「前後関係、文脈、背景、共通項」など、使い方によって色々な意味になり得ます。この記事を書くにあたって改めて調べてみると、contextについて解説しているサイトがほとんどありませんでした。アメリカではよく見聞きする単語です。
1) You should learn new words in context.
(新しい単語は文脈の中で学ぶべきだ)
1)では、in contextで「文脈の中で、前後関係から」として使っています。頻繁に出てくるフレーズですのでぜひ覚えて下さい。
2) I’m afraid your statement in the meeting was out of context.
(あなたの会議での発言は支離滅裂だったと思う)
2)は反対にout of contextで「前後関係を無視して、何の脈絡もなしに、支離滅裂で」という意味です。こちらも非常によく使います。またここでは、好ましくないことを予想した「~ではないかと思う」をafraidを使って表しています(関連記事:「~ではないかと思う」という表現)
3) The movie was interesting but is really high context.
(映画は面白かったけど、分かる人にしか分からない内容ですね)
3)のhigh contextが、実はいちばん取り上げたかった表現です。非常に訳しにくく辞書を引いても「高度なコンテクスト」なんて日本語が出てきます。
一般常識や文化などを共有する度合いが高いことをhigh contextといいます。要するに「いちいち説明しなくても分かってる」ということです。例えば、「それってサザエさん的だよね」と言えば、たいていの日本人は言わんとしていることを理解できますよね。それが象徴するもの、意味するものを説明する必要がありません。「あ・うん」の呼吸といわれるように、日本がhigh contextな文化の代表であることは明確で、日本人のコミュニケーションもhigh contextな文化が基盤となっています。
一方、移民の多様な文化を取り入れながら発展してきたアメリカは、共有する文化的背景の度合いが低い国で、low-context cultureなどと表現されます。ですから、言語でそれを補う必要があります。もちろん今はメディアやインターネットが発達したので、以前より共有の度合は高まったのかもしれません。
アメリカにもhigh contextな分野があるのですが、面白いことに世界中で受け入れられています。それはハリウッド映画です。ハリウッド映画を見ていると、アメリカに住んでいなければ理解できない会話(特にジョーク)や話の展開が満載で、「海外の人はどこまでわかってるのかな?どんな訳がついているんだろう?」と不思議に思うことがよくあります。もちろん、high contextな部分がすべて理解できなくても、十分な娯楽性があるのは確かですが。ラップミュージックも非常にhigh contextだと思いますね。
解説が長くなりましたが、そういった背景から上記の例文に「分かる人にしか分からない内容」という対訳をつけました。ほかにも「内輪ネタが多い」「背景を知らないと理解できない」「限られた人だけに面白い」といった捉え方ができます。日本の漫画やアニメもそうですが、簡単に理解できないhigh contextなコンテンツはかえって、「その奥にあるものを知りたい」と多くの人に思わせるのかもしれません。
4) In the meeting, the attendees discussed in a high-context manner so I had a hard time understanding it.
(会議でのディスカッションは、参加者の高度な予備知識に基づいていたので、私はほとんど分からなかった)
4)の直訳は「参加者は高いコンテクストなやり方でディスカッションした」となります。「高度な予備知識に基づいて」と訳しましたが、専門的な知識というより「特定の人にしか分からないこと」と捉えるほうがいいと思います。In a xxx mannerで「xxxな方法で」という表現です。